VLANとトランキングの基礎|ネットワーク分割の仕組みとCisco機器での設定方法
VLANとは?ネットワークを論理的に分割する技術
CCNP取得を目指す受講生から「VLANの概念は知っているけど、実際の設計でどう使うかがわからない」という相談をよく受けます。CCNAレベルではVLANの基本を学びますが、現場ではもう一段深い理解が求められます。この記事では、ネットワークエンジニアとして現場で培った知識をもとに解説します。
VLAN(Virtual Local Area Network)は、物理的なネットワーク機器の接続に関係なく、ネットワークを論理的に分割する技術です。同じスイッチに接続されていても、異なるVLANに属する機器同士は直接通信できません。
VLANを使う3つの理由
- セキュリティ向上:部門ごとにVLANを分けることで、営業部と開発部のトラフィックを分離。不正アクセスのリスクを低減できる
- ブロードキャスト制御:VLANはブロードキャストドメインを分割するため、不必要なブロードキャストが全体に広がらない
- 柔軟なネットワーク設計:物理的な配線を変えずに、論理的な構成変更が可能
実際の現場では、「フロアが違うのに同じ部署のネットワークに所属させたい」という要件がよく出てきます。VLANがあればこれを物理配線なしで実現できます。
アクセスポートとトランクポートの違い
VLANを理解するうえで最も重要な概念がこの2つのポートタイプです。
アクセスポート
PCやサーバーなど、エンドデバイスを接続するポートです。1つのVLANにのみ所属します。接続機器はVLANの存在を意識しません。
トランクポート
スイッチ間やスイッチとルータ間を接続するポートです。複数のVLANのトラフィックをまとめて転送します。フレームにVLAN IDのタグ(IEEE 802.1Q)を付与して識別します。
講師として受講生によく言うのは「アクセスポートは『どのVLAN所属か』、トランクポートは『複数VLANの幹線』とイメージしてください」ということです。
Cisco機器でのVLAN設定コマンド
実際の設定例を見てみましょう。Cisco IOSの基本コマンドです。
VLAN作成
- Switch(config)# vlan 10
- Switch(config-vlan)# name SALES
アクセスポートの設定
- Switch(config)# interface GigabitEthernet0/1
- Switch(config-if)# switchport mode access
- Switch(config-if)# switchport access vlan 10
トランクポートの設定
- Switch(config)# interface GigabitEthernet0/24
- Switch(config-if)# switchport mode trunk
- Switch(config-if)# switchport trunk allowed vlan 10,20,30
現場では「allowed vlan」を適切に絞ることがセキュリティ上重要です。全VLANを通してしまうのはアンチパターンです。
Inter-VLAN Routing:VLAN間の通信を実現する
異なるVLAN間で通信させたい場合は「ルーティング」が必要です。主な方法は2つです。
- Router on a Stick:ルータのサブインターフェースを使い、1本のトランクリンクでVLAN間ルーティング
- L3スイッチ(SVIを使用):スイッチ自体にルーティング機能を持たせる方法。現場では大規模環境でこちらが主流
まとめ:VLANはインフラ設計の基本中の基本
VLANとトランキングはネットワークエンジニアとして現場に出たら必ず触れる技術です。概念の理解だけでなく、Cisco Packet Tracerなどで実際に設定してみることで一気に理解が深まります。CCNAの勉強中の方も、ぜひ手を動かして確認してみてください。
トランキングとは:複数VLANを1本の回線で通す技術
VLANを複数設定した場合、スイッチ間を接続するポートには「トランクポート」を使います。アクセスポート(1つのVLANのみ)とトランクポート(複数VLANを通す)の違いを正確に理解することがCCNAおよび現場での基礎です。
- アクセスポート:PC・サーバーなどエンドデバイスを接続するポート。1つのVLANのみ割り当てる
- トランクポート:スイッチ間・スイッチ&ルーター間を接続するポート。複数のVLANフレームを通す
トランクポートではIEEE 802.1QというプロトコルでVLAN IDをフレームに埋め込み(タギング)、受信側でVLANを識別します。
Cisco機器でのVLAN・トランク設定コマンド
! VLANの作成
Switch(config)# vlan 10
Switch(config-vlan)# name SALES
Switch(config-vlan)# exit
Switch(config)# vlan 20
Switch(config-vlan)# name ENGINEERING
Switch(config-vlan)# exit
! アクセスポートの設定
Switch(config)# interface GigabitEthernet0/1
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 10
! トランクポートの設定
Switch(config)# interface GigabitEthernet0/24
Switch(config-if)# switchport mode trunk
Switch(config-if)# switchport trunk allowed vlan 10,20
! VLAN・トランクの確認
Switch# show vlan brief
Switch# show interfaces trunk
Router-on-a-Stick:レイヤー3スイッチなしのVLAN間ルーティング
異なるVLAN間で通信させるにはルーティングが必要です。レイヤー3スイッチがない環境では「Router-on-a-Stick」構成を使います。
! ルーターのサブインターフェース設定
Router(config)# interface GigabitEthernet0/0.10
Router(config-subif)# encapsulation dot1Q 10
Router(config-subif)# ip address 192.168.10.1 255.255.255.0
Router(config)# interface GigabitEthernet0/0.20
Router(config-subif)# encapsulation dot1Q 20
Router(config-subif)# ip address 192.168.20.1 255.255.255.0
1本の物理インターフェースをサブインターフェースに分割し、VLAN IDごとにIPアドレスを付与することでVLAN間ルーティングを実現します。現場では小規模環境やコスト制約がある場合に使われます。
VLANに関するよくある設定ミスと対処法
- アクセスポートのVLAN番号が一致していない:接続できない最多原因。show vlan briefで確認する
- トランクポートにallowed VLANが設定されていない:デフォルトは全VLAN許可だが、意図せず特定VLANがブロックされるケースがある。show interfaces trunkで確認する
- ネイティブVLANの不一致:トランクポートのネイティブVLAN(デフォルトVLAN 1)が両端で一致していないとフレームが正しく処理されない
まとめ:VLANとトランキングの要点
- VLANは物理配線を変えずにネットワークを論理分割する技術
- アクセスポート(1VLAN)とトランクポート(複数VLAN)を正しく使い分ける
- VLAN間通信にはレイヤー3スイッチまたはRouter-on-a-Stickが必要
- 設定後はshow vlan brief・show interfaces trunkで確認する
VLANはネットワーク設計の基本中の基本です。CCNAで概念を理解したうえで、Cisco機器での実際の設定コマンドを手を動かして練習することで確実に身につきます。




